大手企業でのプレッシャー、やりがいは見つけられず…
私は香川県の出身で、母と祖母、兄と弟二人の6人家族で暮らしていました。高校卒業後は、兄弟が多く学費のこともあり、私は進学ではなく就職を希望していたので学校推薦で地元の大手企業に入社する事ができました。主な業務内容はデスクワークの事務仕事でした。
学生時代のアルバイトは接客業で楽しく働いていたので、机に向かって黙々と作業する仕事に少し違和感を感じながらも、せっかく大手企業に入社できたのだから・・・と自身に言い聞かせ働きました。
しかし、だんだん専門知識が追いつかず、大手企業というプレッシャーの中で役に立てていない自分に自己嫌悪。仕事の悩みを相談できる同世代の社員もいなくて、日に日に先輩社員との関係がギクシャクしていくばかりで会社に行くことが辛くなり、ついには睡眠障害が発症してしまいました。
限界を感じた私は自主退職する事にしました。
憧れの都会での就職と一人暮らし… 現実は突然の解雇
退職してからは、とにかく地元を離れたいという一心で都会での仕事を探しはじめました。
大阪市内のパン屋さんに再就職が決まり、香川を離れて大阪に引っ越してきました。そのパン屋さんはおしゃれなお店で制服もかわいく、憧れの都会の真ん中で働けることが嬉しくて、覚えることが多くて大変でしたが、楽しく研修期間を過ごしていました。
しかし、身体に軽いアレルギー反応がでてしまい、衛生面を考慮したうえで働き続けることが難しいとの判断で解雇されていまいました。
初めて知った『 湯灌(ゆかん) 』という言葉
その後は地元に戻るという考えは無く、ひたすらスマホの求人サイトで仕事を探していたある時【 湯灌師・納棺師 】という仕事を見つけました。その時に初めて湯灌(ゆかん)という事を知り、インターネットで湯灌について調べ始めました。
『 湯灌 』なんて、地元に居た時には聞いたこともない言葉でしたが、調べていくうちに都会では湯灌が一般的に知られている事に驚きました。インターネットには、かなり細かく湯灌の内容が紹介されていて『 精神的につらい仕事 』なんだろうというイメージは強かったのですが、映画やテレビドラマの影響で『 こういう仕事はカッコイイな 』と何となく思っていました。
どうしても『 湯灌の仕事がしたい 』という気持ちで…
それから、湯灌の仕事に対してどんどん興味が湧いてきて、求人サイトでは湯灌師・納棺師の仕事ばかりを探しました。
多数の会社から湯灌の仕事の募集がありましたが、眺めているだけでは始まらないので思い切って、そのうちの一つに電話で応募してみました。しかい運転免許が無いことを理由にあっさり断られ、面接すらもしてもらえませんでした。どの会社の求人を見ても募集条件に運転免許が必要と書かれていて諦めかけていたときに当社(紫音)の募集を見つけました。
紫音のホームページ(このサイト)を見たところ、細かく業務内容も記されていて、求人ページにも運転免許が必須とは書かれていなかったので急いで電話をかけました。今まで断られ続けていたので不安な気持ちで電話をかけましたが、受け付けてくださった方の対応はとても気さくな対応で安心したのを、今でもよく覚えています。
面接の時も、今までの面接のようなピリピリ感もなく、緊張している私を気遣いながら、怖そうな顔をした社長が優しくフランクに話してくださったことが有難く感じ、大手企業にはないアットホームな雰囲気に惹かれました。
面接の結果は合格。でも、やっぱり車で移動する事が主な仕事なので、ゆくゆくは運転免許を取得するという事を条件に採用してもらえました。
悲しみを喜びに変えられる仕事に
採用された喜びも束の間、不安いっぱいで研修が始まりました。今までの人生で、亡くなった人のご遺体を見たのは、私のおじいちゃんの葬儀の時に一度だけ。分かっていることは、事前にインターネットで調べた【 湯灌の知識 】のみ。
初めて湯灌の現場に立ち会った時は率直に難しい仕事だなと感じました。亡くなられた方の御家族は悲しみが深く涙を流されながら湯灌にお立ち会いされていました。人が亡くなる悲しさを近くで初めて感じ戸惑いつつ、先輩方が御家族に優しい言葉をかけながら仕事を進め、最後は笑顔で亡くなった方を囲う御家族を見た時本当に感動しました。また一方で、自分にここまでの仕事ができるのか不安になりましたが「 頑張って一人前になりたい 」と思いました。
研修期間は覚えることが多いですが、細かく指導してもらえました。思い通りに仕上がらず悩んでいる私を察してくれた先輩方は、本音で話し合う時間を設けてくださり、すぐにサポートしてくれました。そうすると、今まで見えていなかったことが見えてきたり、意識する事が変わってきている自分に気がつきました。
それに伴って技術力も上がり、先輩にも御家族にも褒められることが増えてきました。大変さより嬉しさ、楽しさが上回ってきて、これほど感謝される仕事は無いと改めて思いました。研修が始まった時「 大丈夫。必ずできるようになるから 」と言われていました。「『 若いのにすごいね 』っていわれるようになって欲しい 」とも期待を込めて言われていました。
今では訪問した先で『 若いのにすごいね 』とお声をかけて頂くことも多く、本当に嬉しく励みになっています。多くの御家族に喜んでいただき沢山の『 ありがとう 』というお言葉をいただき、悲しみを喜びに変えられるこの仕事にとってもやりがいを感じています。
今の私の一番の課題は御家族の気持ちを汲み取ることです。この仕事においては永遠の課題だとも上司から教えられました。
まだ、『 葬儀 = 悲しいだけではない 』という様子がやっとつかめてきた段階です。その場その場で求められている事を察し、お応えできるようになれるように頑張っていきます。これから、まだまだ勉強し、経験を重ねて、先輩方にご指導いただきながら成長していきたいです。